近年、褥瘡治療における鍼治療の有効性が注目を集めています。褥瘡は、長期間の圧迫により皮膚や筋肉に生じる深刻な損傷で、主にベッドに寝たきりの患者に見られます。痛みや感染のリスクが高く、患者のQOLを著しく低下させるだけでなく、医療費の増加や入院期間の延長など、様々な問題を引き起こします。
従来の褥瘡治療には限界があることから、新たな治療法の探索が求められています。そこで、古くから東洋医学で用いられてきた鍼治療の可能性が検討されています。
最新の研究結果
2024年に発表された研究論文「Acupuncture Treatment for Pressure Ulcers」(GlobalRPH誌)は、褥瘡治療における鍼治療の有効性を検証しました。Armela Escalonaらの研究チームは、2023年12月までに発表されたランダム化比較試験(RCT)をメタアナリシスにより統合し、鍼治療を介入として標準的な創傷ケアと比較しました。
その結果、鍼治療を受けたグループは、標準的な創傷ケアのみを受けたグループに比べ、治癒率が高く(60% vs 40%)、創傷のサイズの減少(30% vs 15%)が見られました。また、治癒時間も短縮され(4週間 vs 6週間)、24時間の滲出量も減少(10ml vs 5ml)しました。
鍼治療の方法
論文では、鍼治療の具体的な方法についても言及されています。患者の褥瘡周辺にある特定の経穴(ツボ)に鍼を刺入し、週に2回、1回30分のセッションを8週間継続するというプロトコルが用いられました。
今後の展望
このメタアナリシスは、褥瘡治療における鍼治療の有効性を体系的に評価し、その臨床的有用性を示しています。しかし、含まれた試験のサンプルサイズが小さく、鍼治療の種類が多様であったため、結果の一般化には限界があります。
鍼治療の具体的な効果や最適な治療プロトコルを明確にするためには、さらなる大規模な研究が必要です。それでも、鍼治療は標準的な創傷ケアに加えて、褥瘡の治療を強化するための補助療法として考慮する価値があるでしょう。
今後、鍼治療が褥瘡治療の選択肢の一つとして確立されることが期待されます。患者のQOL向上と医療費削減の両面から、鍼治療の可能性に注目が集まっています。