「疲れ」の正体とは? ー 疲労の科学的な見方

私たちは日々の生活の中で「疲れた」と感じることが多いですが、その「疲れ」が一体何なのか、詳しく知る機会は少ないかもしれません。

実は、この「疲れ」や「疲労」にはさまざまな種類があり、それぞれ異なる原因やメカニズムが関わっています。

今回は、1999年に発表されたアメリカの研究「Defining and Measuring Fatigue」(Aaronsonら)を参考に、疲労についての科学的な視点をわかりやすく紹介します。

疲労は単なる「疲れ」ではない

日常で感じる疲れは単純に「体がしんどい」といった感覚だけでなく、生理的な疲労心理的な疲労といった側面があります。

生理的な疲労は、例えば病気や睡眠不足、栄養の偏りなどが原因で、私たちの体の機能が追いつかなくなる状態です。

これには、ホルモンや神経伝達物質が不足することが関係しています。

一方、心理的な疲労はストレスや不安、さらには仕事や人間関係の悩みなど精神的な要因が関わっています。

心理的な疲労は、単に体を休めてもすぐに回復しないことが多く、意欲や集中力にも影響を与えることがわかっています。

疲労の分類とその意味

Aaronsonらの研究では、疲労を単純に「病気によるもの」と「健康な人の日常的な疲れ」に分けるのではなく、さらに細かく分類することが重要だとされています。

例えば、急性疲労慢性疲労身体的疲労精神的疲労などです。

  • 急性疲労は、睡眠不足や一時的な負荷が原因で起こり、休息を取ることで回復することが多いとされています。
  • 慢性疲労は、長期的なストレスや病気が原因で、通常の休息だけでは回復しづらい特徴があります。

こうした分類は、日々の生活の中で「どのような疲労を感じているのか」を知る手がかりになります。

たとえば、「仕事が原因で慢性的に精神的な疲労を感じている」と気づけば、心のリフレッシュ方法を取り入れたり、負担を軽減する工夫が必要だと理解できるかもしれません。

自分の疲れを理解するために

この研究では、疲労とは「活動に必要なエネルギーやリソースが不足し、その結果として身体的・精神的な能力が低下した状態」とも説明されています。

これは、体や心の「エネルギーの残量」が少なくなっていると考えるとわかりやすいかもしれません。

エネルギーが不足すると、私たちは活動に集中することが難しくなり、リソースが回復しない限り、「疲れた」と感じ続けます。

この視点を持つことで、自分のエネルギーの使い方や、休息の取り方を見直すきっかけになるでしょう。

まとめ

「疲労」とひとことで言っても、その原因や感じ方は人によって、また状況によって異なります。

Aaronsonらの研究が示すように、疲労を科学的に理解することで、自分の疲れを冷静に見つめ、対策を考える助けになります。

疲れたときにただ「少し休む」だけでなく、自分の疲れ方のタイプを理解して、その原因にあった対処を取ることが大切です。

健康な毎日を送るために、まずは自分の「疲れのサイン」に耳を傾けてみませんか?


出典: Aaronson, L. S., Teel, C. S., Cassmeyer, V., Neuberger, G. B., Pallikkathayil, L., Pierce, J., … & Wingate, A. (1999). Defining and measuring fatigue. Journal of Nursing Scholarship, 31(1), 45-50.