慢性閉塞性肺疾患(COPD)に対する鍼治療の可能性

慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、世界的に主要な死因の一つであり、2030年までに第3位になると予測されています。COPDは喫煙などが原因で気道が狭くなり、呼吸困難や咳、痰などの症状を引き起こす進行性の疾患です。現在の治療法には限界があるため、新たな治療法の開発が求められています。

そんな中、2000年以上の歴史を持つ伝統医療である鍼治療に注目が集まっています。2014年に発表された系統的レビューでは、16件のランダム化比較試験(RCT)のデータを分析し、鍼治療がCOPD患者の生活の質(QoL)と呼吸困難を改善する可能性があることが示されました。

レビューによると、鍼治療を受けた患者群では、QoLの指標であるSGRQスコアが平均8.33ポイント改善し、呼吸困難の指標であるMRCスケールも平均0.34ポイント低下しました。また、6分間歩行距離も平均28.14メートル増加しました。一方で、肺機能への影響は見られませんでした。

これらの結果は、鍼治療がCOPD患者の症状緩和と生活の質向上に寄与する可能性を示唆しています。しかし、含まれる研究の質にばらつきがあり、バイアスのリスクも高いため、結果の一般化には限界があります。

今後は、より大規模で質の高いRCTを実施し、鍼治療の効果を検証していく必要があります。また、鍼治療の作用メカニズムについても研究が進められています。COPDの病態生理に対する鍼治療の影響を明らかにすることで、より効果的な治療法の開発につながることが期待されます。

鍼治療は、現在の標準治療を補完する役割として検討する価値があるでしょう。副作用が少なく、患者のQoL向上に寄与する可能性のある鍼治療は、COPDの包括的な治療戦略の一部として位置づけられる可能性があります。

COPDは今後さらに患者数の増加が見込まれる疾患であり、その対策は喫緊の課題です。鍼治療をはじめとする伝統医療と現代医療の融合により、より効果的で患者の生活の質を重視した治療法の確立が期待されます。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25478799/