不眠症は現代社会における深刻な健康問題の一つです。ストレスの多い生活や不規則な睡眠習慣などが原因で、多くの人が不眠に悩まされています。不眠症の治療には、薬物療法や認知行動療法などがありますが、副作用や長期的な効果への懸念から、代替療法を求める人も少なくありません。
そんな中、鍼治療が不眠症に対して効果があるという研究結果が注目を集めています。2016年に発表されたシステマティックレビューでは、30件の無作為化比較試験のデータを分析し、鍼治療がプラセボや薬物療法と比較して、統計的に有意な睡眠の質の改善効果があることが示されました。
この研究では、不眠症に推奨される特定の鍼治療のツボ(HT7、GV20、SP6など)を含む組み合わせが使用されていました。また、ほとんどの研究で対照群として薬物療法(主にベンゾジアゼピン受容体作動薬)が用いられていましたが、認知行動療法を対照としたものはありませんでした。
研究の結果、鍼治療はプラセボと比べてPSQI(ピッツバーグ睡眠質問票)のスコアを有意に改善することが示されました。ただし、研究のバイアスリスクや結果の異質性が高いため、エビデンスのレベルには限界があると考えられています。
このレビューの結果は、不眠症に対する鍼治療の有効性を示唆するものですが、より質の高い研究デザインによる検証が必要とされています。鍼治療は副作用のリスクが低く、薬物療法の代替となる可能性を秘めていますが、適切な治療法の選択には医療従事者との相談が不可欠です。
不眠症に悩む人々にとって、様々な治療選択肢があることを知ることは重要です。鍼治療は、その有効性と安全性から、不眠症の代替療法として期待されています。今後の研究によって、エビデンスがさらに蓄積されることを願っています。
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0965229916300164